更年期症状にあてはまる不調には、別の病気が潜んでいる場合もあります。
気になる症状があれば、是非、当院を受診いただいて、ご相談ください。
きっと、お悩みのお力になれると思います。
精神神経系の症状
頭痛
更年期症状と関連する頭痛として代表的なものには
❶ 片頭痛
男性よりも女性に多く、特定のアルコール・カフェインの摂取、睡眠不足と並んで、エストロゲンの減少が明らかな誘因の1つと考えられています。
月経に伴う片頭痛も月経時・黄体期のエストロゲンの低下で説明されていま
❷ 緊張型頭痛
疲労や長時間同じ姿勢でいることによる血流の低下が原因とされ、男性よりも女性に多く見られます。
閉経後に症状が変わらない、または悪化したと訴える女性が多いですが、エストロゲンの影響については未だ不明な点も多いです。
めまい
「めまい」の定義には諸説ありますが、原因によって、脳の障害による「中枢性めまい」と内耳や神経の障害による「末梢性めまい」は「前庭性めまい」に、さらに更年期によるめまいは、「非前庭性めまい」に分類されます。
めまいの種類によっては、ぐるぐる回る回転性めまい、ふらふらする動揺性めまい、気が遠くなる失神型めまいに分類されます。
症状が激しかったり長引く場合は、他の病気でないかどうか、受診することをお勧めします。
不眠
閉経後の女性は顕著なようです。
不眠のタイプは大きく以下の4つに分類されます。
- 【入眠障害】就寝後入眠するまでの時間が延長し、寝つきが悪くなるもの
- 【中途覚醒】入眠後、翌朝起きるまでに何度も目が覚めるもの
- 【早朝覚醒】通常の起床時間より2時間以上早く目が覚め、再入眠できないもの
- 【熟眠障害】睡眠時間は十分であるにもかかわらず、深く眠った感覚が得られないもの
更年期に不眠が増加する一因として、ほてりや発汗といった血管運動神経症状が夜間に起こることで睡眠が妨げられることが考えられています。
また、不安や抑うつなどの精神症状に伴って不眠が生じることもあり、更年期の様々な心理社会的ストレスが原因となる場合もあります。
ほかにも、プロゲステロンやエストロゲンの生産減少が関連して、一般男性に多いとされている睡眠呼吸障害が閉経後の女性で増加していることも推察されています。
不安感
更年期の症状としてよく表れる症状のひとつに、不安感があげられます。
特別な理由も無く暗い気持ちになったり、以前は興味があったものに関心が無くなったり、不安で落ち着きが無いといった症状が出現します。
・心がざわついて落ち着かない
・自分の将来が不安になる
・言葉では言い表せない不安感や孤独感を感じることがある
・人生このままでよいのかと落ち込んでしまう
女性ホルモンは、脳の視床下部からの指令により卵巣から分泌されますが、卵巣の機能が衰えると、脳が「ホルモンを出せ」と指令を出しても分泌されず、視床下部・下垂体の機能に変調を来します。
視床下部はさまざまなホルモンの分泌や、精神活動なども司る自律神経のコントロールセンンターなので、この変調が律神経症状をはじめ精神神経症状などを引き起こします。
イライラ
更年期になると、以前は気にしなかったことやちょっとしたことにイライラしたり、怒りやすくなるなど、感情のコントロールが難しくなることがあります。
・前は気にならなかったことに急にイラッとする
・突然焦燥感にかられる
・ささいな出来事に腹が立つ
セロトニンは、神経伝達物質の1つでストレスホルモンと言われるノルアドレナリンをコントロールし、精神を落ち着かせ、「幸せホルモン」とも呼ばれています。
セロトニンの生成に関わる女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、セロトニンが不足し、感情がコントロールできずにイライラするようになります。また、社会や家庭での様々なストレスにより、自律神経のバランスが崩れることも要因となります。
うつ
更年期の症状として、うつ症状や不安症状が出現します。症状としては以下のようなことがあげられます。
- 物事に対してほとんど興味がない、または楽しめない
- 気分が落ち込む、憂鬱になる、または絶望的な気持ちになる
- 疲れた感じがする、または気力がない
- 自分自身あるいは家族に申し訳ないと感じる
- 寝つきが悪く途中で目が覚める、または逆に眠りすぎる
- あまり食欲がない、または食べ過ぎる
- 動きや話し方が遅くなる、あるいは反対にそわそわしたり落ち着かず、ふだんよりも動き回る。
更年期による卵巣機能の衰退は、エストロゲン減少により視床下部・下垂体の機能に変調を来し、自律神経症状をはじめ、内分泌系や免疫系の失調症状、精神神経症状などを引き起こします。
また、更年期は女性にとって心理・社会的にも不安定で全年齢を通して最もストレスを受けやすい時期と言われています。
血管運動神経系の症状
ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)
閉経前から多くなり、女性の6割程度が経験するといわれ、そのうち日常生活に支障を来すほど重症になるのは1割程度と考えられています。
症状としては、2~4分間持続する熱感と発汗を自覚し、脈拍が増加します。
ほてりや発汗は顔面から始まり頭部・胸部に広がります。顔面のほてりや発汗のみの場合もあります。
・突然身体がカーっと熱くなる
・急に顔が紅潮する
・ドキドキが止まらない
・涼しいのに、汗が止まらない
エストロゲンの減少によって、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が乱れることによって起こります。
ホルモン以外の原因としては、暖かい部屋でのドライヤーの使用などが誘引(トリガー)となることもあります。
動悸・息切れ
一般的な運動後の動悸と違い、激しく体を動かしたわけでもないのに突然胸がどきどきすることがあります。
場所やシーンも問わず寝ているときに症状が出るケースも。
また、呼吸がしづらく息切れを起こしたりします。
女性ホルモンは、脳の視床下部によってコントロールされていますが、更年期になると卵巣の機能が衰え女性ホルモンの分泌がうまくできなくなります。
卵巣の機能が低下・停止しているのにもかかわらず、視床下部は「女性ホルモンが減った」という情報をもとに性腺刺激ホルモンを出し続け、ついには視床下部がパニックに陥ってしまいます。
視床下部は、自律神経や免疫系の中枢でもあるので、自律神経のバランスも崩れてしまいます。
自律神経は、拍動や呼吸などをコントロールしているため動悸や息切れなどの症状が引き起こされてしまうのです。
寝汗・発汗
寝汗(発汗)も「ホットフラッシュ」同様、血管運動神経症状の1つで、更年期の代表的な症状です。
ホットフラッシュは実際には昼間だけではなく、夜間も同じように起こるため、睡眠時にほてりや発汗が起こります。
ホットフラッシュ同様、エストロゲンの減少によって、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が乱れ、体温調整ができなくなることによって起こります。
むくみ
血液やリンパの流れが悪くなると、細胞と細胞の間に水分と老廃物が溜まり、むくみとなって現れます。
更年期になるとむくみが出やすく、また、冷えのひどい人はむくむことが多いと言われています。
更年期には、エストロゲンの減少によって、女性ホルモンのバランスが乱れ、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経の乱れにより、血行が悪くなるため、むくみが起こります。また、加齢による筋力低下によってリンパの流れも悪くなることも原因です。
皮膚・分泌系の症状
のどの渇き
更年期には、喉や口が異常に渇くことがあります。
ドライマウスは唾液の分泌量が減少し、口の中が乾く状態ですが、口の渇きが喉の渇きに関わるとも考えられます。
・異常に喉が渇く
・口が渇く
・食べ物を上手く飲み込めなくなった
・しゃべりにくくなった
更年期による多汗、頻尿も原因の1つと考えられますが、エストロゲンの減少により、粘膜が乾燥することが原因です。
エストロゲンは、皮膚や粘膜を保護し、潤いを保つ作用があります。エストロゲンの減少により、自律神経のバランスが崩れ、唾液の調整も乱れます。
ドライアイ
更年期になると、眼精疲労が起こりやすく、また、ドライアイもこの時期に多くなります。
ドライアイは、眼の表面を覆う涙の膜が途切れやすくなり、表面の粘膜が荒れた状態になります。
卵巣機能低下によるエストロゲンの減少により、眼球の表面が乾燥することが主な原因となります。エストロゲンには目の潤いを保つ作用があります。
消化器系の症状
吐き気
更年期による吐き気は、個人差はありますが、長期間、頻繁に感じる人もいます。
吐き気は前触れなく、突然催し、嘔吐してしまう場合もあります。
・胃腸の調子が悪くなった
・急に気持ち悪くなる
・食欲が起こらない
・つわりのように吐き気がする
胃腸は副交感神経が働くリラックスしているときに活動しますが、エストロゲンの減少により自律神経が乱れることで、交感神経が活動を続けてしまうと胃腸の不調や吐き気が起こります。
胃もたれ・胸やけ
胃がもたれたりむかつきを感じるといった症状や、胃の痛みや吐き気などを感じることがあります。
・以前より食欲が減り、食べる量が減った
・食べ過ぎたつもりはないのに、胃がもたれる
・夜中に胃がムカムカして目が覚める
・お腹にガスが溜まったような感じがする
胃腸は自律神経に強く影響される臓器です。
更年期でエストロゲンの分泌が減ると、自律神経が乱れ、胃弱の状態になり消化力も弱くなってきます。
運動器官系の症状
肩こり・腰痛・背中の痛み
肩周辺が痛んだり、こわばったり、だるくなったりする症状で、肩だけでなく首から背中にかけての部分にも症状が表れやすくなります。
有症率は女性に多く、中高年層に発症頻度が高いとされています。
肩こりは、肩甲骨から首の間の筋肉が緊張して、血行が悪くなり、乳酸などの疲労物質が筋肉の中に溜まることで生じます。
人間の体は首だけで頭部を支える構造になっているため、その重みで首と肩には負担がかかります。
腰痛も、腰の骨に負担がかかり、血行が妨げられ乳酸が溜まって生じます。
また、骨格がゆがんで神経を圧迫することで、痛みが出る場合があります。
さらに、女性は男性に比べて、肩の周りの筋肉や腰の周りの骨を支える筋肉が弱いために、症状が出やすいのです。
特に更年期以降では加齢による筋骨格系の老化と様々なストレスなどの社会的背景から肩こりが増加すると考えられています。
関節痛
最初は関節が鳴る程度から始まりますが、肩・手指・膝などの関節痛やこわばり・腫れ、また皮膚を蟻が這うような感じ(蟻走感)を訴える場合があります。
・階段の上り下りがつらい
・手首の関節の痛みが引かない
・ヒールがはけない
・かかとが痛くてうまく歩けない
加齢やエストロゲンの減少によって、関節を支えている軟骨や筋肉の衰え、関節内の水分減少、更に血液の循環が悪くなったりすることによって関節痛が起こるといわれています。
しびれ
女性ホルモン(エストロゲン)が不足すると血流を調節している自律神経が影響を受け、血の巡りが悪くなって手足がしびれる症状が出る場合もあります。
女性ホルモンであるエストロゲンが減少することで皮膚が薄くなり、乾燥しやすくなります。
さらに、刺激に敏感になった皮膚がしびれを感じやすくなるといわれています。
泌尿器・生殖器系の症状
月経異常
月経異常(生理不順)とは、「正常な月経の範囲外にある状態」をいいます。
一般的に正常の月経周期は25~38日、持続日数は3~7日、月経時の血液量の正常な範囲は20~140mlと言われています。
月経異常(生理不順)は、周期がバラバラだったり、月経期間が短かったり長かったりと、悩みのタイプはさまざまです。
【頻発月経】前回の月経から24日以内に次の月経が始まる性周期
【稀発月経】39日以上たっても次の月経が始まらない状態
【無月経】3ヵ月以上月経がない状態
また、閉経の前にも月経不順になります。
最終月経から1年以上月経がこなくなった状態を閉経といいます。
・月経サイクルの異常
・月経期間
・月経量の異常
・月経に伴う不快症状
精神的・身体的なストレスが原因でホルモンバランスが崩れ月経異常(生理不順)を起すこともあります。ダイエットや無理な食事制限が原因にもなりますので、若い世代は特に注意が必要です。
尿失禁
自分の意思とは関係なく尿がもれてしまい、いくつかのタイプに分類できます。
・トイレが近い
・トイレのことを考えるとすぐに出てしまい間に合わない
・くしゃみをした時や大声で笑ったときに漏れてしまう
・重い荷物を持つと漏れてしまう
女性の骨盤底筋群(膀胱や尿道、子宮など骨盤内の臓器を支える筋肉)が緩み、骨盤の中にある臓器がきちんと支えられていないために起こるもので、妊娠・出産、加齢、肥満、閉経による女性ホルモンの低下などがおもな原因としてあげられます。
性交痛
膣の粘膜が弱くなって分泌物が減少するので、性交時に痛みを感じたり、出血を起こすことがあります。
女性のQOLを激しく低下させたり性生活に支障を来すことがありますので、更年期の重要な症状のひとつに位置付けられます。
更年期には、膣の機能低下により血流が低下し、膣の乾燥や感染が起こりやすくなることが分かっています。性交痛は更年期により女性ホルモンの分泌が減少し、膣の部分の潤滑液などが十分に出ないなどの理由で生じます。